民法 総則|代理権の消滅
民法の「なぜ?」を解説します
任意代理は本人の破産も代理権消滅事項になっているのはなぜ?
任意代理・法定代理共通の代理権消滅事項として、本人の死亡、代理人の死亡・破産・後見開始の審判がありますが(民法111条1項)、任意代理の場合は、本人の破産も代理権消滅事項になっています(民法653条)。
なぜ、任意代理の場合は、本人の破産も代理権消滅事項になっているのでしょうか?
代理人の利益を保護するため
任意代理が本人の破産を代理権消滅事項としている理由は、代理人の利益を保護するためです。
通常、任意代理人は本人から報酬をもらって代理する形で契約を結んでいるため(例:行政書士が本人を代理して手続きを行う)、本人が破産してしまうと、報酬がもらえなくなってしまいます。
それでは代理人がかわいそうなので、本人が破産したら、代理権が消滅するのです。
ちなみに
法定代理が本人の破産を代理権消滅事項となっていない理由は、代理人に保護する利益がないことと、本人を保護するためです。
法定代理人は、たとえば未成年者の親権者のように、法律の規定によって代理人となっているので、報酬をもらう契約などはしていません。
そのため、法定代理人には保護する利益はありません。
また、未成年者のように、本人の能力が不十分であることが通常ですので、法定代理人の代理権が消滅してしまったら、その本人の面倒を見る人がいなくなってしまいます。
そのような観点から、法定代理では本人の破産は代理権消滅事項となっていないのです。