民法 総則|未成年者の行為能力1
民法の「なぜ?」を解説します
未成年者が債務弁済を受けることが取消しうる行為になるのは?
行為能力(確定的に法律行為を有効に行いうる能力)が広く制限されている未成年者でも、「単に権利を得、または義務を免れる行為」は単独で有効に行えます(民法5条1項但書)。
そのため、債務の免除(例:借金免除)を受けることは未成年者でも単独で有効に行えます。
それに対し、債務の弁済(例:借金返済)を受けることは「単に権利を得、または義務を免れる行為」には当てはまらず、取消しうる行為となります。
お金の返済を受けることは未成年者にとって何ら損はないようにも思えますが、なぜ、債務の弁済は取消しうる行為なのでしょうか?
相手方に対する債権を失うことになるから
債務の弁済を受けると、その後は相手方に弁済の請求ができないことになります(債権喪失)。
また、相手方に利息付でお金を貸している場合、弁済を受けることにより利息が取れなくなってしまいます。
そのような性質を持つ債務の弁済は、「単に権利を得、または義務を免れる行為」には当てはまらず、未成年者が単独でその弁済を受けた場合、取消しうる行為になります。
ちなみに
未成年者が使用貸借(無料で物の貸し借りをすること)の借主になることも、「単に権利を得、または義務を免れる行為」には当てはまらず、取消しうる行為となります。
理由は、無料で物を借りるのであれば良いような気もしますが、借りることによって善管注意義務(最高レベルの注意義務)や、物の返還義務が発生するからです。