民法 物権|所有権と抵当権の混同
民法の「なぜ?」を解説します
所有者が1番抵当権者になっても1番抵当を残しておくのはなぜ?
所有権に抵当権が設定されている場合、所有者と抵当権者が同一人物になると抵当権は消えます(例:抵当権者が所有権者から抵当に入っている家を譲り受けた場合)。
しかし、所有権に1番抵当と2番抵当が設定されている場合、所有者と1番抵当権者が同一人物になっても、抵当権は消えません。
所有者が1番抵当権者なら、1番抵当を残しておく意味がないように思えますが、なぜこの場合は1番抵当が残るのでしょうか?
所有権を得た1番抵当権者が不利益を被るおそれがあるから
所有者が抵当権付物権を得た場合、その抵当権者が自分1人の場合、抵当権を残しておく実益がないので、所有権だけが残ることになります。
しかし、2番抵当権者がいる場合に、所有者が持っている1番抵当を消してしまうと、抵当権が実行されたときに、所有権を得た1番抵当権者が不利益を被るおそれがあります。
もし、この場合に1番抵当を消してしまうと、2番抵当権者が1番抵当に繰り上がることになります。
そうなると、抵当権が実行されたときに、2番抵当権者は本来1番抵当権者が受けることのできる取り分を持っていくことができてしまいます。
その結果、所有権を得た1番抵当権者は、競売により所有権を失う上、本来1番抵当権者として受けることのできる取り分も受けられなくなってしまいます。
これでは所有権を得た1番抵当権者がかわいそうですし、2番抵当権者が法外な利益を得ることにもなります。
そのため、この場合は抵当権は消えず、1番抵当権者は、所有権者兼1番抵当権者となります。