民法 物権|取消に係わる第三者との対抗関係
民法の「なぜ?」を解説します
不動産所有権移転の取消に係わる対抗関係に違いがあるのはなぜ?
不動産の所有権の移転について、下図1(左側)のようにAB間が取消す前に第三者Cが現れた場合、Aは登記なくしてCに所有権を対抗できます。
しかし、下図2(右側)のようにAB間が取消した後にCが現れた場合、Aは登記なくしてCに所有権を対抗できず、AとCは対抗関係に立ちます。
なぜ、このような違いがあるのでしょうか?
AとCのどちらを保護すべきかのバランスで考えます
上図1の場合、取消す前にCが現れているので、AはCより先に登記をすることができません。
そのような場合に登記で決めるのは不公平ですし、結果としてCは、取消により無権利者となったBから譲り受けていることもあるので、Aは登記なくして自己の権利を対抗できるとされています。
それに対し上図2の場合、取消したときにまだCは現れていないので、Aは登記をすることができます。
それを怠っているような場合にまでAの勝ちとしてしまうと、Cの保護に欠け、不公平感が残ります。
そのためこの場合、AとCは対抗関係に立つとされています(登記を持っているほうの勝ち)。
実務小話
試験では登記あり・なしが問題になりますが、実際には、登記されていない不動産はほとんどありません。
そのため、どちらに登記があるかといったことが問題になったことは、僕の実務上では1回もありません。
ちなみに僕が、実務上、登記されていない使用中の建物に出くわしたのは、以下の2回です。
- 某レジャーランドの中に建っている建物
- 某自動車販売店の敷地内にある事務所用建物