憲法 人権|法の下の平等 と 尊属殺・尊属傷害致死重罰規定
憲法の「なぜ?」を解説します
尊属殺と尊属傷害致死の罰則に合憲違憲の結論が分かれたのは?
刑法200条の尊属殺重罰規定について判例は違憲としました(尊属殺重罰規定違憲事件)。
それに対し、刑法205条2項の尊属傷害致死重罰規定は合憲としました。
なぜ判例は、このように結論が分かれたのでしょうか?
刑の加重の程度に違いがあるから
判例は、「尊属殺と普通殺人」「尊属傷害致死と普通傷害致死」とを比べて、刑の加重の程度が著しいかどうかで判断としています。
- 尊属殺重罰規定
普通殺人の場合と比べて刑の加重の程度が著しい
→ 法の下の平等に反し 違憲 - 尊属傷害致死重罰規定
普通傷害致死の場合と比べて刑の加重の程度が著しいものではない
→ 法の下の平等に反せず 合憲
このとおり、刑の加重の程度に違いがあるため、合憲違憲の結論が分かれています。
ちなみに
刑法200条の尊属殺重罰規定は平成7年に削除され、刑法205条2項の尊属傷害致死重罰規定も同年に改正され、現在これらの条文はありません。
余談
尊属殺重罰規定違憲事件の加害者は、とてもかわいそうな状況でした。
そのため、合憲違憲を論じる前に、どうしても刑を軽くしてあげたいという結論が先にあったと思います。
しかし、刑法に従うと、その結論が実現できません。
その結論にあわせるためには、上記の理由をつけて、刑法の規定を違憲とするほかなかったという背景があると思います。