行政法総論|民法177条の適用
行政法総論の「なぜ?」を解説します
行政強制の場面で判例が分かれるのはなぜ?
公法上の関係について、私法である民法177条(不動産に関する物権は登記がないと第三者に対抗できない)が適用されるのか、という問題について判例は、「自作農創設特別措置法による農地買収」には適用はないとしました。
それに対して、「租税滞納処分による差押」については適用があるとしました。
ともに行政強制の場面ですが、なぜ判例がこのように分かれたのでしょうか?
私人対私人でも類似した場面があるかどうかで考えます
まず「農地買収」のほうは、国による農地の強制買い上げであり、私人対私人による売買と比べると、強制力が働いているという点で性質が違います。
私人対私人では、強制的に買い上げることはできません。
そのため、この場合は、私経済上の取引の安全のために設けられた民法177条の適用はないとしました。
それに対して「滞納処分による差押」の場面では、国が強制的に差押さえていますが、私人対私人による債権者の差押にも強制力はあります。
この点で、「国の地位」と「私人対私人による債権者の地位」が類似しています。
そのため、この場合は民法177条の適用があるとしました。