行政事件訴訟法|形式的当事者訴訟の存在意義
行政事件訴訟法の「なぜ?」を解説します
形式的当事者訴訟が必要なのはなぜ?
形式的当事者訴訟は、行政庁の処分や裁決に関する訴訟なので、実質的には抗告訴訟と同じです。
それなのに、なぜ抗告訴訟とはせずに、形式的当事者訴訟といった別の訴訟類型にする必要があるのでしょうか?
大きな問題でなければ行政庁以外の当事者同士で争ってほしいから
形式的当事者訴訟の場合、争いが三者間になるため、「大きな問題でなければ行政庁以外の当事者同士で争ってほしい」という趣旨があります。
たとえば下図において、収用委員会(行政庁)が土地所有者からの土地収用とその補償額について決定を下したとします。
これに関して土地所有者は、収用には不服はないが、補償額には不服があるとします。
このような場合、収用委員会にとっては、収用できるかどうかは大きな問題です。
一方、収用できた後の補償問題は小さな問題であるため、収用委員会は訴訟に関与しないということで、起業者を被告として形式的当事者訴訟で争うことになります。
この訴訟類型は損失補償を規定した法律で認められている場合が多いです。
なお、上記の実例としては、新幹線を通すために土地を収用する場合があります。
その場合は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が起業者となります。
実務小話
僕の行政書士実務において、離婚協議書を作るときに、収用される土地が財産分与の対象になっていたことがありました。
行政書士試験の勉強で得た知識を実務で使うことは少ないのですが、そのときは上記の内容を思い出しました。
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